実物の麻雀牌
前回の続きです。
あまりに麻雀牌が高く、手が出せなかった私たち。
今なら楽天やアマゾンで探せば安いものは三千円くらいで買えるでしょうか。
しかし、当時はネットショッピングはまだまだ普及はしていません。
Mも1人でプレイするテレビゲームの麻雀に飽きたのか、新しいソフトと手に入れ今度はそれにハマっていました。
私はまだ麻雀をリアルにやりたいという気持ちがありましたが、牌がなくては仕様がなく諦めつつありました。
そんなある日、いつものようにバイト帰りにMの家でだべっていると、共通の友人A、SのうちAが合流。
程なくしてSが満面の笑みで部屋に入ってきました。
手には小さなカバンのようなものを持っています。
対戦ゲームに夢中のMとAに代わって私が声をかけます。
「お疲れ〜、ってなに持ってんだよ?」
「これ見てみ」
そう言うとSは持ってきた小さなカバンをコタツテーブルに置き、開きます。
「うわぁぁ〜‼︎」
私の叫び声でテレビモニターにかじりついていたMとAが振り返ります。
テーブルの上に開かれたカバンの中身はなんと麻雀牌でした。
Mの、Aも歓声をあげます。
「すげえ!」
「どうしたんだ、これ⁉︎」
Sはみんなの反応を見て満足そうに 「昨日の夜何気なく親父に麻雀牌ってあ る?って聞いたら、爺ちゃんのがあるかもしれないって言うから夜中に物置探したらあったんだよね」
確かに置かれた麻雀牌はかなり年季が入っており、牌の背中は本物の竹でできており、表側は何かの骨のようなものでできています。
点棒も竹でできており、麻雀をするための道具はすべて揃っているようでした。
「早速やろうぜ!今日は徹マーだな!」
私たちは早速見よう見まねで洗牌をはじめます。
ジャラジャラと結構な音量で牌の混ざる音がします。
「良いね〜、麻雀してるって感じがするね〜」
みんな実物の麻雀牌に触れられるのが嬉しくてしょうがないない感じでニヤニヤしています。
ここで問題が発生。
洗牌が終わり牌を積む段階で誰一人まともに積み上げることができないのです。
二列に並べた牌の両端を持ち、一列目に積む。
それだけなのに、まず牌を浮かすことができない、浮かせても積む前にガチャッという音とともに牌が弾け飛ぶ…
「これ難しくね…」
私が言うとMは牌を3個くらいづつ持ち、少しづつ積んでいっています。
私たちもそれにならい、少しづつ積みなんとか牌山が完成。
しかし、またまた問題発生。
始め方がわからないのです。
私たちは誰も実物の麻雀をするにあたっての
ルールがわからないのです。
テレビゲームはボタンを押せば勝手にサイコロが振られ、勝手に親が決まり、勝手に開山が行われ、配牌がされる。
しかも私たちのやっていた麻雀ゲームはサイコロ二度振りのルールだったのでゲームを起動し、確認してもなぜそこから開山するのか意味がわからない。
4人であーだこーだ言いながらやろうとしますが、ここで間違ったルールは覚えたくない。
意を決したようにSが
「おれ古本屋で麻雀の本買ってくらぁ!」
と立ち上がります。
麻雀の本はSに任せ、残った私たちは牌を積む練習をします。
こうして私たちの初めての麻雀はなんとも締まらないスタートを切るのでした。